こんな感じで出来る要証事実のとらえ方

論点、判例

はじめに

司法試験において伝聞が出題された場合、要証事実を理解することは不可欠です。なぜなら要証事実によって証拠が伝聞証拠にあたるか否かが判断されるからです。

しかし、私は要証事実が何かという判断がどうしてもわかりませんでした。3年くらい刑訴を勉強したタイミングでも、どうしても要証事実がわからん。教科書を読んでもわからない。要証事実ってなに?立証趣旨=要証事実なのか?主張する人によって変わるのか?伝聞は好かん!いやらしい問題ばかり出る!

どうしようもないので友人と先生、周りの人に聞きまくりました。
結果、たぶんこういう事を書いておけば大丈夫と思うレベルまでは分かったと思うので、以下でまとめたいと思います。(ちなみにこの思考方法でT○C全国模試で優秀答案に選ばれたし司法試験は合格できたので、試験の時点では多分大体こんな感じでいいのではないかと思っています。違ったらゴメンネ。)

伝聞の定義

では今一度、伝聞証拠の定義についておさらいしてみましょう。

伝聞証拠(刑訴法320条)は原則として証拠能力が排除されます。供述証拠は知覚、記憶、表現、叙述のプロセスをたどるところ、反対尋問や宣誓による内容の真実性の吟味ができません。また、直接主義にも反します。そこで、公判廷外の供述の証拠は類型的に信用性が低い、そのため排除するべきといえます。このことから、伝聞証拠とは公判外の供述であって、内容の真実性が問題となるものをいい、これにあたるかは要証事実との間の関係で判断します。

つまり、要証事実の設定によって証拠が伝聞か伝聞でないかが決まってきます。

要証事実とは実体法上の事実であり犯罪事実がどうたら~とか言われても私にはなんのことやら全く分からなかったので、過去問から考えてみましょう。

H30年の刑事訴訟法(司法試験)を使って実践

例えば平成30年の司法試験刑事訴訟法の問題、設問2は伝聞の問題です。

メモの証拠能力について伝聞にあたるかが問題となりますね。

ここで私は、要証事実は自分が検察官になったつもりでどうしたら被告人を有罪にできるか、どんな証拠があると主張すれば裁判官が「これは有罪!」とわかってくれるか、という視点で考えていました。
そのためには、争点がどこかということに注目する必要があります。

平成30年の問題で、事実4にて甲は「V方には行ったことはありません」と述べています。つまり、甲は犯人は自分ではない(犯人性の否認)し犯罪をしていない(罪体の否認)と主張しています。検察は当然犯人は甲だと思って公判をしているので、本問の争点は犯人性と罪体となります。

これの証拠付けが必要なので、検察は甲を有罪にするためにどうするか考えて,本件メモの立証趣旨については,「甲が,平成30年1月10日,Vに対し,本件メモに記載された内容の文言を申し向けたこと」としています。

ここで、立証趣旨=要証事実ではないのですが、立証趣旨から検察が証拠から何を証明しようとしているかが判断できます。

本件については、犯人性についてまず考えますが、本件メモには「A工務店と名乗る男」と書いてあるだけで、Aが、とか甲が、とか書いていません。立証趣旨では「甲の」とありますがメモから男と甲の同一性を見出すのは難しいです。検察官だったらそんな証拠の使い方はしないと思います。

次に、罪体について立証趣旨には「本件メモに…申し向けたこと」とあります。

メモを使って罪体について証明して甲を有罪にするためには、メモについて、本当に1月10日にA工務店と名乗る男が訪問してきて、「不具合がある…金は100万円」といったかどうかを争い、そう言ったということが証明できれば罪体の証明としての申し向け行為が立証されるはずです。つまり、要証事実は1月10日にAと名乗る男性がVに対して「屋根裏…金は100万円」と申し向けたこと、ととらえることができます。

そうすると、メモの内容として本件メモの内容が本当にあったか、真実性が問題となります。内容の真実性が問題となるのが伝聞証拠なので、本件メモは伝聞証拠としてとらえることが可能であるというわけです。

あとはお作法の通り、伝聞例外にあたるか等を書けばおそらく正解筋であると考えられます.

要証事実を設定する上で気を付けているのは、上記の通り検察官が何を争いたいのか、どうやって甲を有罪にできるように証拠を使うか、という点です。

要証事実を設定できたら、あとは本当にその内容が真実かどうかが問題になるか(伝聞)、言っている内容は嘘でも本当でもどうでもよくて、発言があったこと自体が問題になるか(非伝聞)から伝聞法則の適用があるかを検討します。

と大体こんな感じで伝聞と要証事実を考えています。その考えはちょっと違う!とかここが変だよ!という有識者の方や刑事訴訟法に詳しい方いらっしゃったらぜひぜひコメント等いただければと思います。

ではまた!

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